
記憶を紡ぎ、次世代へつなぐ。
記憶を紡ぎ、次世代へつなぐ。
Earthquake Reconstruction Area Management Research Group
被災地には、今も語られていない声があり、
焦点を当てることで初めて動き出すまちの物語があります。
私たちは、現地の人々の声に耳を傾け、記録し、学び、
研究という営みを通じて、その思いを未来につなげていきます。
プロジェクト概要
研究責任者 | 永野 聡(立命館大学産業社会学部・教授) |
ターゲット | 宮城県名取市閖上地区の地域住民、商売人、カナダ関係者、ジャパンタウン(カナダ・ブリティッシュコロンビア州) |
内容 | 2011年3月11日に発生した東日本大震災により、壊滅的な影響を受けた宮城県名取市閖上地区の復興支援活動を実施する。 |
目的・ゴール | ○人間の基本的な生活(働く場、買い物する場、コミュニケーションを取る等)の復興を図る ○震災で影響を受けた地域コミュニティの再生を図る。とりわけ、震災後に移住した新住民と震災前から居住する住民の間の良好な関係性を支援する ○震災復興で多大なるご支援を頂いたカナダの皆様(カナダ連邦政府、ブリティッシュコロンビア州政府、アルバータ州政府、カナダウッドグループ等)との関係(絆)を継続する活動を実施する |
研究実施者 | 立命館大学産業社会学部永野ゼミ5期生(藤井、西田、原口、及田、片山、守岡)、6期生(明石、竹中、木下、西澤、中西、助川)、7期生(光野、辻、森、坂本、大川内、櫻井、池尻) |
記憶を風化させない。
地域に住む方々と同じ目線で歩き、ともに悩み、ともに考え、
そしてともに「これから」の暮らしを描いていく。
それが、震災復興エリアマネジメントという“共創”のフィールドで、
私たちが見つけた、学びのかたちです。

本研究室の担当研究者
Taro Whitred
たろう ホイットレッド
日本カナダ商工会議所副会長 ほか
メッセージ
あああ
これまでのあゆみについて
本研究室は、東日本大震災の復興のあゆみを風化させないため、現在に至るまで約10年前より震災復興にまつわる研究活動へ取り組んでまいりました。この研究では、閖上市を舞台に復興の記憶を紡ぎ、当時の人と人との絆や関係性を現代に受け継ぐため、各種施策を段階的に実施しています。
過去の取り組み
第1フェーズ
震災10年の節目を前に、復興支援の感謝を乗せて【笹かまぼこ】を開発。閖上とカナダの「架橋」に取り組みました。
2019~2021
第2フェーズ
カナダによる国際復興支援【100年後も繋ぐカナダと閖上の絆】の記録を残すべく、動画制作や講演会などに取り組みました。
2022
第3フェーズ
ジャパンタウン再生へ向けて「Vancouver Community Kintsugi Initiative(VCKI)」というプロジェクトが始動。
2023〜
なぜ今、私たちはこのテーマに取り組むのか? –What We Do
私たちが研究対象としているカナダ・ブリティッシュコロンビア州は、毎年山火事や洪水の被害を受けています。さらに、近年の異常気象により被害状況は悪化の一途を辿っていますが、避難訓練や防災に対する市民の関心は低いというのが現状です。そこで、日本の防災手法を海外でも活かすことができるのではないかと考え、まずは山火事に着目してワークショップの開発に取り組んでいます。
また、バンクーバー市には戦前に日本人移民や日系人で栄えていた日本人街がありました。しかし、太平洋戦争をきっかけに街はゴーストタウンと化し、現在は多くの社会課題を抱えているエリアとして人々が寄り付かないような場所になってしまっています。日本人として、先人たちの歴史について知るのは重要なことです。日本人・先住民族・現在ジャパンタウンに関わっている人々すべての関わりを大切にしながら、街の活気を取り戻すこと、日本人にもジャパンタウンについて知ってもらうことを目標に調査活動を行っています。
私たちが描く未来 –Why It Matters
永野ゼミ災害復興エリアマネジメント班の活動は、災害に関わるあらゆる社会課題に実践的かつ複合的なアプローチで取り組むことに大きな社会的意義を持っています。私たちは、東日本大震災で被災した宮城県名取市閖上地区での活動経験を活かし、日本の防災手法を海外に広めることを目指しています。その一環として、カナダでの防災ワークショップを企画・実施しました。これまでのワークショップは地震や津波を対象としていましたが、カナダでは現地で甚大な被害をもたらしている「山火事」に焦点を当てた点が特徴です。参加者からは「防災について考える良いきっかけになった」との感想をいただきました。今後も、より多くの現地の方に向けて実施する準備を進めていく予定です。また、日本国内における山火事ワークショップの実施についても検討していく考えです。
さらに、バンクーバーのジャパンタウンの調査活動も行っています。この活動の目的は、ジャパンタウンの歴史を記録し、地域再生への一歩を踏み出すことです。ジャパンタウンはかつて活気あふれる街でしたが、第二次世界大戦中の強制収容政策により多くの日系人が去り、現在は社会的課題を抱える地域となっています。私たちは、かつてを知る人々への聞き取り調査、現在の関係者へのアンケート調査、そして文献調査の三つの手法を用いて、この歴史を深く掘り下げています。現地の再生プロジェクトが進む中で、地域が歴史を大切にする動きがあることを確認しました。私たちは、調査結果の発信や再生プロジェクトへの協力を通じて、ジャパンタウンの歴史と未来をつなぐ架け橋となるべく、継続的に活動していきたいと考えています。
私たちのアプローチ –How We Work
防災意識の向上を目指し、私たちは課題解決型の防災ワークショップを企画・運営しています。これまで、「地震・津波」と「山火事」という二種類のテーマで実施してきました。これらのワークショップは、参加者が少人数のグループに分かれて行う形式を採用しており、災害が発生した際にどのように行動するか、そして避難時に直面しうる課題は何かを具体的に考えます。そして、それらの課題をグループ内で共有し、解決策を共に導き出すことを目的としています。この活動を通じて、参加者自身の防災行動を促し、地域の防災力向上に貢献することを目指しています。
また、私たちはジャパンタウンの歴史と未来を深く探るため、複合的なアプローチを用いた調査も並行して行っています。この調査は主に三つの手法から構成されています。まず、アンケート調査では、過去の出来事を問う記述式の「過去編」と、現代の状況を尋ねる選択式の「現代編」の二種類を実施し、多角的な視点からデータを収集しています。次に、インタビュー調査では、カナダの先住民の方々に、彼らが持つ土地や自然に対する独自の考え方を伺っています。これは、街を再興していく上での新たな視点や知見を得ることを目的としています。そして、文献調査では、ジャパンタウンに関する書籍はもちろんのこと、現地の博物館などにも赴き、貴重な資料を集めることで、地域の歴史的背景をより深く、正確に理解するよう努めています。これらの多岐にわたる調査活動を通じて、ジャパンタウンの過去を明らかにし、その知見を未来の街づくりに活かすことを目指しています。
また、独自の研究資金の調達方法として、クラウドファンディングを採用しています。
これまでの活動と成果 –What We've Done
2025年1〜3月実施クラウドファンディング
2025年7〜9月実施クラウドファンディング
2025年8月実施山火事ワークショップ
これからの挑戦 –What's Next
数回にわたる海外出張を経験し、日本では得られなかった先住民の方々の知恵や考え方、ジャパンタウンに関わる土地の歴史などを知ることができました。今後は、それらの知見を生かし、防災ワークショップの更なる改良と、ジャパンタウン再興に向けた計画の構想を練っていく予定です。また、山火事ワークショップについては、近年日本国内でも山火事が起こっていることもあり、国内での実施も検討しています。いずれは、国内外問わずさまざまなフィールドで、より多くの皆様に体験していただくことで、防災意識の向上に努めます。また、ジャパンタウンの調査では、ジャパンタウンという土地が現在が抱える問題だけでなく、今日に至るまでの歴史を踏まえ、複雑に絡み合った問題を複合的に解決する視野を持って挑みたいと考えております。
文責:災害復興エリアマネジメント班7期生
新展開:災害復興エリアマネジメント研究
2024年度より、本研究は自然災害と人為的災害の2つに分けて、取組みを深化します。
- 1、課題/Assignment
1ー1、自然災害/ Natural disasters
・カナダ国内で山火事は社会課題→世界的にも山火事は大きな社会課題/Wildfires in Canada (30% loss in Jasper, Alberta) are a social issue→ Wildfires are a major social issue worldwide
・世界的にも地中海性気候に位置するエリア(ロサンゼルス、シドニー等)では共通の社会課題となっている。/The problem is a common social issue in areas with a Mediterranean climate (Los Angeles, Sydney, etc.) worldwide.
1ー2、人為災害/Man-made disasters
・バンクーバー市内のJAPAN TOWNは、アジア人排斥運動と相まった人的な災害であり社会課題/The Japan Town in Vancouver is a human disaster and a social issue that is combined with the anti-Asian movement.
・JAPAN TOWNの復興は、社会学的にも大きなインパクトを与えるだろう。/The reconstruction of JAPAN TOWN will have a great sociological impact. - 2、対策方法/Countermeasures
2ー1、自然災害/Natural disasters
Step1:カナダ国内で大規模に被害が出た箇所を選定(例:ブリティッシュコロンビア州ケロウナ、135㎢消失(2023年)/カナダ全土約1,700万ha=170,000㎢(2023年))/Step 1: Select areas in Canada that have been damaged on a large scale (e.g. Kelowna, British Columbia, 135㎢ disappearance (2023)/approx. 17 million ha across Canada= 170,000 ㎢ (2023))
Step2:日本の技術力を活用し植林を実施/Step 2: Utilize Japan's technological capabilities to carry out afforestation
Step3:植林面積によってカーボンクレジット化を図る。→国際的なカーボンククレジット認証であるVerified Carbon Standard (VCS)、Gold Standardを活用する。/Step3:Carbon credits will be generated by afforestation area. →Use the Verified Carbon Standard (VCS) and the Gold Standard, which are international carbon credit certifications.
※1クレジット=75カナダドル、森林由来のクレジットは、10,000〜16,000円(94カナダドル〜150カナダドル)/トン ※500ha(5㎢)以上
*1 credit = 75 Canadian dollars, 10,000-16,000 yen (94-150 Canadian dollars)/ton for forest-derived credits *500 ha (5㎢) or more
Step4:企業等がカーボンクレジットを購入する。→資金を創出! /Step 4: Japanese automakers (TOYOTA CANADA) and others purchase carbon credits. →Creation of funds!
(例:ケロウナ、135㎢消失(2023年)→4,050カナダドル(43万円)/カナダ全土約1,700万ha=170,000㎢(2023年)→5,100,000カナダドル(5.4億円))
(Example: Kelowna, 135㎢ lost (2023) →4,050 Canadian dollars (430,000 yen) / about 17 million ha across Canada= 170,000㎢ (2023)→ 5,100,000 Canadian dollars (540 million yen))
Step5:資金を元に防災計画(災害リスクコミュニケーション、コミュニティーエンゲージメント、防災プランニング、防災教育施設の整備等)を策定/Step 5: Develop a disaster risk management plan (disaster risk communication, community engagement, disaster risk management planning, development of disaster risk management education facilities, etc.) based on the funds
STEP6:カナダでの一連の仕組みをモデル化(CANADA Method)/STEP6: Model a series of mechanisms in Canada (CANADA Method)
2ー2、人為災害(VCKAと連携)/Man-made disasters (in cooperation with VCKA)
Step1:JAPAN TOWNを調査(2025年1月30日(木)〜2月3日(月)で実施)/Step 1: Survey JAPAN TOWN (conducted from Thursday, January 30 to Monday, February 3, 2025)
Step2:再生復興プロジェクトを始動!/Step 2: Start the rehabilitation and reconstruction project!
Step3:カナダでは政府系資金の獲得を目指す。日本でも様々な機関に相談し協賛を得る。/Step 3: In Canada, seek government funding. In Japan, consult with the Japan Foundation (https://www.jpf.go.jp/) to obtain sponsorship.
Step4:資金を元にエリアマネジメント計画(コミュニティーエンゲージメント)を策定→JAPAN TOWNでの一連の仕組みをモデル化 /Step 4: Develop an area management plan (Community Engagement) based the funds→ Model a series of mechanisms in JAPAN TOWN
実施時期/Timing of implementation
- Step1〜3:オンラインベースでの意見交換/Step 1-3: Exchange of opinions on an online basis
・2024年11月より議論の開始を想定
Discussions are expected to begin in November 2024. - Step4:防災ワークショップ/JAPAN TOWN現地踏査に関して/Step 4: Disaster Prevention Workshop/JAPAN TOWN Field Trip Scheduled to be implemented in February 2025.
・ワークショップを実施/Description: Workshops led by students of the Nagano Seminar, Faculty of Industrial Sociology, Ritsumeikan University.
災害復興エリアマネジメント研究に関連する広報一覧
これまでの広報活動をまとめました。
○立命館大学広報課より
復興支援の縁を風化させない 永野聡准教授のゼミが「いま繋がろう、閖上とカナダ」を開催(2023.3)
○立命館大学広報課より
産業社会学部・永野聡准教授が「令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞」を受賞(2022.2)
○立命館大学 研究・産学官連携 RADIANTより
○立命館大学災害復興支援室より
ゆりあげ港朝市の復興を通じた研究業績により、産業社会学部・永野聡准教授が「科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞」を受賞されました!~永野聡ゼミの閖上地区における取り組みを紹介します!~