本プロジェクトは、芸術祭の開催地をフィールドに、ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)の実践を通じて、地域住民と外部参加者の対話や協働を促す研究活動です。新潟県十日町市(大地の芸術祭)や香川県宇多津町(瀬戸内国際芸術祭)などで、地域の記憶や文化をテーマにしたワークショップや作品制作を行い、世代や地域を超えた交流を創出します。アートを媒介に地域課題への主体的な関心を高め、持続可能な地域づくりの可能性を探ります。
プロジェクト概要
| プログラム責任者 | 永野 聡(立命館大学産業社会学部・教授) |
| ターゲット | 地域文化や現代アートに関心を持つ人々/地域社会、住民の方々 |
| 内容 | 現代アートを社会課題解決のツールとして活用し、ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)の理論と実践を探求。地域住民との協働を通じて、地方の人口減少・高齢化・伝統産業衰退といった課題にアートでアプローチする。 |
| 目的・ゴール | ⚪︎アートを媒介に、地域住民の主体的な関心やコミュニケーションを促進し、世代間・地域内外のつながりを強化する。 ⚪︎SEAによる社会的効果を理論と実践の両面から検証し、研究成果を論文や学会で発表。 ⚪︎アートと社会課題解決を結びつける方法論を提示し、地方創生におけるアートの可能性を広げる。 |
| 出展 | 大地の芸術祭 |
本研究室の担当研究者
なぜ今、私たちはこのテーマに取り組むのか? –What We Do
なぜ今、私たちはこのテーマに取り組むのか?
私たちは、新潟県十日町市で行われてきた「わら細工」を通じて、地域の記憶や文化を次の世代につないでいくことの大切さに注目しました。十日町市は昔から稲作が盛んであり、冬の間には家庭でわら細工による生活用品を作る文化が根付いていました。しかし現在では、高齢化と人口減少により、そうした技術や記憶が失われつつあります。
現代アート班は、何に取り組んでいるのか?
私たちは、「わら細工ワークショップ」を通じて、小学生と高齢者が共に伝統文化を体験しながら交流する場をつくることに取り組んでいます。世代が異なる人たちが交流する中で、地域の文化や暮らしの知恵を語り合い、学び合うことで伝統の継承と地域活性化につなぐのが目的です。また、作成した作品を1年間日常的に使用してもらい、その後集めて一つのアート作品として再構成することで、暮らしの中に根ざしたアートとして地域の記憶を表現する取り組みを行います。
私たちが描く未来 –Why It Matters
私たちが描く未来とは?
私たちは、地域の文化が「過去のもの」ではなく、次の世代へと手渡され、日々の暮らしの中で生き続けていく未来を描いています。そのために、わら細工という伝統技術を介して、世代を超えた対話やつながりが生まれる場をつくりたいと考えています。
研究の目的とは?
高齢化や人口減少が進む地域では、文化や技術の継承が大きな課題となっています。本ワークショップは、藁細工を通じて住民の対話・交流を生み出し、地域と向き合う時間をつくることで文化や記憶を共有することを目的としています。また、日常生活で使えるものを制作し、それをアート作品にするこの取り組みは、日常と芸術をつなぐ新たな地域づくりのかたちを提案するものです。
私たちのアプローチ –How We Work
研究方法について
十日町市の地域調査を行って昔行われていた「藁細工」に注目しました。そして、小学生と高齢者が協力して鍋敷きをつくるワークショップを企画しました。十日町市にある水沢小学校と川治小学校の5年生の授業の中でワークショップを開催することになっています。作品は1年間日常で使ってもらい、その後集めて一つのアート作品として再構成する予定です。
また、ワークショップの前後にアンケートを行い、参加者の地域や伝統文化に対する意識の変化を調べます
これまでの活動と成果 –What We've Done
活動実績
2023年度は、新潟県十日町市の小学生を対象に、地域への愛着を育むためのアートワークショップを実施しました。2024年度には、香川県宇多津町の小学生とも協働。海をテーマに、特産品である塩と海ごみを融合させたアート作品を制作しました。また、私たちは、これまで⼤地の芸術祭のアーティスト団体Doobu/ドーヴとの連携を通じて、芸術祭の作品制作にも携わっています。
2025年度は、新潟県十日町市の2つの小学校にて、小学生と地域の高齢者と一緒にわら細工を用いたアート作品制作のワークショップを行います。
大地の芸術祭2024《34mmの彩り》
大地の芸術祭2022 《皓雪冽白 (こうせつれっぱく)〜漉(す)き込む十日町の記憶〜》
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/white-blanket-of-tsumaris-milleu/ , https://www.doobu.art/
これからの挑戦 –What's Next
創造的なアイデアで社会に変革をもたらしましょう
これまで私たちは、地域に住む小学生から高齢者まで多くの人たちと協働しながら、地域が抱える様々な課題とアート作品を通してアプローチしてきました。「外部の大学生」であるという視点を生かして、少子高齢化に伴う人口減少や若者の地域への関心の希薄化と向き合い、アート作品を制作する過程を通じて地域の方々との交流の機会を大切にしています。私たちの活動は、単なる作品制作に留まらず、人と人との繋がりを生み出し、地域に新たな視点をもたらす力を持っています。今後もソーシャリー・エンゲイジド・アートが社会に変革をもたらす可能性を模索し、あなたのアイデアを私たちと一緒に形にしませんか。
文責:現代アートを活用した地域活性化研究班7期生